僕は君のもの
その日は朝から雨が降っていて、ただでさえ行きたくない学校に行くのがさらに憂鬱になった。
「帰ってきたら温泉まんじゅうが待ってるから頑張って行って来なさい。」
まるで機嫌を取るようなお母さんの声。
「温泉まんじゅう?誰か旅行に行ってるの?」
「内野さんとこ。昨日からご夫婦で温泉だって。いいわよね~。
そういえば最近直哉くん見ないじゃない。また連れてきてよ。お母さんイケメン好きなのよねぇ。直哉くん、家の息子になってくれないかしら?」
何も知らないお母さんにイラ立ちが増す。
「いってきま~す。」
いつの間にか玄関を出たら真っ先に直ちゃんの家を見るのが日課になっていた。
毎日見たところでがっかりするだけなのに。
なのに…、
傘を開く手が止まる。
軒先から落ちてくる雨粒に手が濡れた。
美紀の視界に入って来たのは傘をさしながら家を出てくる直ちゃんだった。
そして同じ傘に入っている女の人。
二人は楽しそうに肩を寄せ合う。
しっかりと繋がれた手。