僕は君のもの
あれ以来、二人の間で直ちゃんの名が出ることは一度もなかった。
中庭の昼食会はいつの間にかなくなっていて、書道室に食べに来る人もいなかった。
美紀の言う“先輩”が“中村先輩”を指すことも定着した。
先輩のお母さんとも仲良くなった。
森先輩は相変わらず1カ月ごとに彼女を変えている。
あの公園には高校生が集まるようになった。
美紀の口癖が「先輩がね…」になった。
教室がどんなにつまらない場所であっても先輩という存在があれば耐えられた。
美紀も先輩もお互いがなくてはならない存在になっていた。
そして今日。
先輩が美紀を置いて卒業する。