先輩(仮)
「ほら、ごめんって…いこ?」
いつまでもしゃがみこんだままの誠さんに手を差し伸べる
「ん…」
それに応えてくれて、誠さんも手を出して私の手を握る
「よっ…と」
誠さんが意外と体重かけて立ち上がったのでこちらも力が入る
でも、それは誠さんが立ったと同時になくなり引っ張っていた力はそのままなわけで後ろに倒れそうになった
「わわわわっ!!……きゃっ!」
後ろに倒れそうになっていた身体は繋がれたままになっていた誠さんの手によって引っ張られた
それはとても力強く、バランスの取れなくなっていた私の身体はそのまま誠さんの胸に飛び込んでしまった
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なにこれ、デジャヴ…
相手は違うけど、遊園地での崇哉との事を思い出した
「ごめん優莉、大丈夫?」
同じ男の人でも全然違う感触…
「優莉?」
「あ、ごめん!!」
慌てて離れる…何やってるんだろ、相手は誠さんなのに
「いや、いいけど大丈夫だった?」
「う、うん!大丈夫!はやくいこ!」
顔が赤くなっているのを見られたくなくて、足早に誠さんの前を歩く
受付にいってチケットを買って誠さんに渡す
「はいどーぞ!」
「お、ありがと!いくらだった?」
「いーよ、いーよ!聞きに来てくれただけでありがたいもん!」
「でも、おごられるのは男としても、年上としても恥ずかしいんだけど…」
そういうもんなの…?
「でも、ほんと安いからいいよ!」
「……わかった、ありがとう!じゃあその代わりに今度なんかおごるね!」
「え!?それこそいーよ!じゃあチケットおごらないっ!」
だってそれってまた誠さんと会わないといけないってことでしょ?
今回コンクールに来てくれた事はとてもありがたい事だけど、この人いろいろと面倒だからなるべく会いたくない…
「はい、拒否権なーし!これ決定事項!その時はまた連絡するから」
おごりなんて気前のいいこと言うんじゃなかった…