先輩(仮)



言いたいことだけ言ってヤブ医者は会場の中に入っていく


もーっ!ほんとに嫌なヤツだ!



相手が去ってしまった以上、この苛立ちはどこにもぶつける事ができず、みんなのいる公園に戻る



「りっちゃん、遅かったね?もうご飯食べる時間ないよ?」


「あー…大丈夫、今食べてきたから」


なんて本当は食べるつもりもなくて弁当さえ持ってきていなかった


まあ、あのヤブ医者のおかげで怪しまれずにすんだかな


「電話、誰だったの?」

崇哉がえっちゃんとの会話が終わったところで聞いてきた

この場合正直に答えない方がいいよね?この前、誠さんと電話してる時不機嫌になったし…


「えっと、知り合いの人がね来てたんだけど、迷っちゃったらしくて会場まで案内してたんですよ」



「ふーん…誰か呼んだんだ?…俺も最後のコンクールになるんだから誰か呼ぶべきだったかなー」


「そっかぁ…崇哉たち先輩は最後なんだね…」


「うん、っていうかお前も辞めるんだろ?」


「…へ?…なんで…」


「なんでって…たまたま顧問と話してるの聞いちゃって…」


「えーーー!りっちゃん辞めるの!?」


えっちゃん!声でかい!


公園にいた他の部員もざわつく


そして、一緒にコンクールに出る里野の生徒も私の方を見た


けいちゃんも敬多もなんで?と言う顔で私を見ている


これでみんなに知られちゃったのか…


崇哉は申し訳ないというジェスチャーをしていた


…ここまでみんなに知られちゃったら、隠せないよね



「まあ、家庭の事情ってやつかな?」


ほんというと今の三年生が抜けてしまうと、合唱になる気がしないからだ

でもそんな事えっちゃんや後輩の前では言えないし、家庭の事情と言うのもあながち嘘ではない


「もうちょっと前もって言ってくれれば良かったのに…」


「ごめん、えっちゃん…」


というか、合唱部のみんな…


本番前にモチベーション落としちゃったなぁ…






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