Dangereuses tower
咄嗟の行動だった。

危ないと思った瞬間、俺の足は勝手に動いていた。

完全に体勢を崩し、今にも転倒しそうな朝霧の体を抱きしめ、彼女を庇うような格好で、俺はエスカレーターを転げ落ちる!

「っ…!…!!…!!!」

頭部、肩、背中、腰。

激しく回転しながら、何度も何度も階段部分に体を強く打ち付けられる。

その度に痛みが走り、俺は苦痛に顔を歪めた。

だが人間というのは不思議なもので、どんなに痛みを感じていても、抱きしめたままの朝霧の体は離さない。

結局エスカレーターの下まで転げ落ち。

「恭一!しっかりして、ねぇ恭一!」

ハルカが駆け寄ってくるまで、俺は朝霧を放す事はなかった。

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