オレンジ色の携帯
「どこの誰って言われても…」
「グダグダ言ってないで、って!!あッ」
「もしもし?」
勢いの良い女の子(らしい)がまた俺に罵声を響かせようとした時その声が途切れた。
次いで出た声に俺はかたまる。
今朝少しだけ話した、彼女の、声。
ドクンと心臓が波打って声が喉に詰まる。
「今朝、電車の中で声を掛けたんですが覚えていらっしゃいますか?」
きちんとした敬語に携帯越しでも澄んだ声。
ヤバい、俺今嬉しい。
携帯を掛けていた彼女に恋して今は俺がその相手。
彼女はあの日のようにはにかみながら電話をしてくれているんだろうか。
「もしもし?」
困惑した彼女の声に現実を思い出した。
…そんなワケないじゃんか。