オレンジ色の携帯
「良くここにくるの?」
席に座った俺に彼女は周りを見ながら聞いてきた。
「しょっちゅう来るね」
爺さんに会いにって付け加えると彼女はクスクス笑って孫みたいって言う。
クスクスって笑うのがこの子の癖みたい。
控えめな笑い方は彼女のイメージにぴったり。
「好きな物ある?」
「え?」
メニューを頼もうと聞くと彼女はポカンとして俺を見た。
「いや、あの、何食べるかなって…」
「あっ。ええと…果物とか好きかな」
言われた通りに果物を使った物で俺のオススメを頼んだ。
ここの料理は全制覇してる。
「好きなもの、ある?」
じっと俺を見る彼女の目は凄く澄んでいていつまでも眺めていたい。
若干茶色の瞳に俺が映る。
彼女の中に俺がいるっとか一人盛り上がってしまう。
急に彼女の目がそらされた。
顔ごと下を向いてしまって気まずい空気が流れる。
あっ好きな物聞かれてたんだった…
焦って返事をしようと身を乗り出すようにすると彼女が顔を僅かに上げた。