オレンジ色の携帯
今日もいつものように車掌さんに背中を押されて電車に乗る。
イテェッつーの。
閉まる扉を安堵して見る彼らを恨めしげに睨む。
客は神様なんだぞ。
出発で電車がグラリと揺れて車掌さんを見ていた俺は少しバランスを崩してしまった。
咄嗟に吊革がぶら下がっている鉄棒を掴むも体は傾く。
周りの人が迷惑そうな目で俺をチラリと見るけど悪いのは車掌さんだからっ。
「…きゃ」
禿げたリーマンを睨んで体制を整えようとしたら小さな悲鳴が聞こえた。
意外と近くで聞こえた声に振り返って見るが人混みで誰かはわからない。
不思議に思いながら安定した自分の体を確認して鉄棒から手を離した。