オレンジ色の携帯


独り敵対心剥き出しだった俺を軽くあしらって去っていった夕爺はやっぱり高レベルのプレイボーイだろう。


「ありがと、ね?」


憮然と夕爺の後ろ姿を見送っていると彼女が俺の顔を覗き込んできた。


今までで最も近い距離だからかすっきり甘い彼女の香りが俺の鼻腔を掠めた。


予想通りの香りに苛立ちも忘れ頬が緩んでしまう。


「うん、食べてみて。おいしいよ?」


「………。」


はいってフォークを渡したのに彼女は俺の顔を見たまま固まってしまった。


じーっと見つめられたら俺もさすがに照れる。


さっきの彼女の気持ちが分かった気がした。


それに好きな子だし…。


自分で思って更に照れ、彼女の目の前に手をかざして視線を遮った。


「ハハ、見過ぎ」


「え、あっ、あの、そ…」


短く意味のない声を上げながら彼女はボッと頬を染めた。


そして。






「…かっこいいなぁって」










え?




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