秘密の★オトナのお勉強③
それは―――自分の育った環境ゆえの、悩み。
小さい頃から、自分の父親が人気俳優という事は公認の事実で、あたしの周りには常に人が集まっていた。
だけどそれは、あたしではなく、全てお父さん目当て。
サインを求められるのは当たり前で、お父さんに会いたいが為にあたしに近付いたり、家にまで押しかけてきたりした子も居た。
それが、とてつもなくイヤだった。
周りにはたくさんの人が居るのに、その人達を“友達”だとは到底思えない。
自分を、あたしを、ちゃんと見て。
あたしは“貞永ちい”という一人の人間なのに、まるでその存在を無視されているような気がして、苦痛だった。
きっと周りの人は、あたしの“友達”になって、芸能人の知り合いにでもなりたかったのだろう。
そんな悩みを抱えたまま、保育園、小学校、中学校と時が過ぎ、もうすぐ高校に入学する。
そして今の状況から逃げようと思いついた手段が―――誰もあたしの事を知らない土地へ行こう、という事だった。
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