秘密の★オトナのお勉強②
菊池にバレないように、ゆっくりと物音を立てずに、後をつけていく。
なんだか、直感だけど。
このチャンスを逃したら、二度と、あたしは菊池に笑いかけてもらえないような、そんな予感がして。
「…トイレなんて、大嘘じゃないの」
前をひたすら歩いていた菊池が、ようやく足を止める。
だけどそこは、菊池が言っていた、トイレなんて場所じゃなく。
―――青空がまぶしく光る、知る人ぞ知る、撮影現場での穴場だった。
いつものスタートラインの撮影は屋内で、あるビル内に、会社や遼平と桃のそれぞれの自宅のセットを作り、そこで撮影している。
もちろん、今あたし達が居る場所も、そのビルの中。
だけど、こんな所があったんだ。
非常階段を上がった先にある、何も置かれていない少しのスペースだけど、窓から入ってくる太陽がまぶしい、ココロ癒される場所が。
よく景色も見えて、普段何気なく生活している都内が一望できる。
菊池は…こんなに素敵な場所を、知っていたんだね。
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