秘密の★オトナのお勉強②
菊池の必死な声が、あたしの耳に届く。
だけど、当の本人は、今何が起こっているのか、理解出来ていない。
スローモーションのように傾いていく自分を、他人事のように感じながら、あたしは冬馬のいる廊下へと落ちていく。
そこで、やっと理解した。
あたしは今、階段から落ちているのだ、と。
身体が速度を上げながら落ちていく中、あたしは何故か冷静な気持ちでいた。
このまま、自分の身体が床に叩きつけられたら、相当痛いんだろうな。
痛そうな傷を作ったあたしを見て、貞永は辛そうな表情を浮かべるんだろうな。
そんな事を淡々と思っていたから、あたしは無意識に身体を床に打ち付ける準備をしていた。
だから、疑問に思った。
なんで階段から落ちたあたしの身体が、痛みを感じていないんだろう、と。
そして…
唇に感じる温かいモノは、一体何なんだろう、と。
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