愛しい君へ
『梨李こっち来い』
さっき腕を掴まれたことを思い出す。
「いやッ!」
その手を振り払った。
「梨李・・・?」
現実に引き戻された。
「どうしたんだよ?」
「・・・何でもない」
「嘘つけ。お前は嘘が下手なんだよ。帰るぞ」
腕をまた掴まれる。
でもその手を振り払った。
「・・行くぞ」
今度は手を繋がれた。
「あ、これなら大丈夫なんだ」
・・気遣わせちゃったかな。
そう思いながらも家に連れてかれた。
唯兄は遊びに行ったらしい。
ソファに座らされた。
「はい、ココア。飲め。落ち着くぞ」
結城兄ちゃんの作るココアは大好き。
「・・ありがと」
そのココアを飲む。
すっごい甘口。
普通の人が飲んだら絶対甘いって言って飲まないほどの甘さ。
「どうだ?落ち着いた?」
「ぅん・・・。話すよ・・・」
そう言ってさっき見たこと、めーるのこと、今まで起きた事全部を話した。
結城兄ちゃんは自分のココアを飲みながら黙って聞いてくれた。
全て話し終わったらあたしは泣いていた。
もうわけが分からない。
「そぅか・・。でもさ、梨李はその龍哉って奴が大好きなんだな」
「そんなことないッ・・!」
「聞いてて分かるぞ。必死に悪く言おうとしてんだけど、悪く言えてねぇよ」
龍哉・・・。
「お前、自分の気持ちちゃんと伝えた?ど-せひねくれた言い方とヵ反応したんだろ?」
自分の気持ち・・・。
「自分の気持ちが・・分かんないもん・・・」
「ば-か」
結城兄ちゃんにデコピンされた。
あたしは驚いて目を見開く。