愛しい君へ


「そんなの分かんないんぢゃなくて気付いてねぇだけやろ?こいつは分かってるよ」
そう言って自分の心臓を指差す。
「お前は俺らの妹だろ?大丈夫だよ。たとえ失敗したとしてもお袋や親父、俺らがついてるからッ」
結城兄ちゃんは二カッと笑った。
「兄ちゃん・・・ッ。あたし・・行ってくるッ!」
「ぉぅ。気をつけてな」
手を振る兄ちゃんを背に走って家を飛び出した。

届かなくたっていい。
言わないよりはマシ。
きっとだめだって分かってても、
言える勇気、それさえあれば大丈夫。
見失いかけてた何かが
見えた気がした。

龍哉の病室にノックもしないで入った。
「梨・・・梨李!? どしたの、そんな息切れして・・・」
「あれ-? まだ来たの-?」
さっきの女性と龍哉が居た。
「はぁ・・・」
呼吸が落ち着かない。
「お前、いい加減帰れよ。うっと-しいんだけど」
「いいぢゃない。彼女なんだしッ★」
「だヵらちげ-ってんだろ」
「龍哉」
「何?」
あたしは勇気を出して言う。
後悔しないように。

「あたしは・・龍哉の彼女になれて良かったよ。たくさん傷付いたヶド・・それでも楽しかった
。幸せだったよ。あたしは・・本当に龍哉のこと、大好きだった・・。新しい彼女さんと仲良くね。ぢゃあ」
言いたいことは全部言った。
もう十分・・・。
あたしは帰ろうとした。
「待てよ」
龍哉が後ろから抱き締める。

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