愛しい君へ
変化
「ほれ、着いた。早く行ってやれ」
病院に着いた。でも足は進まない。
「・・あたし先行ってるよ・・・?」
「俺も実美ちゃんに付き添ってくよ。一応危なっかしいから」
そう言って実美と唯兄は行った。
「梨李、大丈夫だよ。俺らが一緒だヵら。泣きたいなら泣けばいい。彼氏はきっと、待ってるよ。梨李が来るのを。梨李に逢うことを・・」
その時、風がふわっとあたしの背中を押した。
足が自然と動く。
きっと覚悟が決まったんだ・・。
龍哉に・・逢いたい・・・。
まっすぐ龍哉の病室に向かう。
そして龍哉の病室の前で足が止まった。
深く深呼吸をする。
後ろでは結城兄ちゃんがついてきてくれてる。
ドアを開ける。
「・・龍・・哉・・・?」
ベッドに寝転ぶ龍哉は・・
まるで事故を起こした日のように
たくさんの管をつけていた・・。
呼吸してるのに・・呼吸してないみたいで・・。
もう見たくなかった・・・。
でも・・目を逸らせない・・。
結城兄ちゃんがあたしの手を握っててくれた。
奈津さんも慎耶も目が赤い・・。
きっと・・泣いてたんだ・・・。
でもあたしが来るヵら・・泣くの我慢してるんだ・・。
「龍哉・・・? 龍哉だよね・・・?」
あたしは結城兄ちゃんと繋いだ手を離し、ゆっくり龍哉に近付く。
手を握っても握り返してくれない。
『梨李、おいで』
そう言って広げてくれる大きな手はもうない。
大好きな声も聞こえない。
さっきまで笑ってたのに。
また明日来いって言ってたのに。
やっぱりあの時帰らなきゃ良かった・・・。
離れなきゃ良かった・・・。