愛しい君へ
「でも・・怜は・・気付いてたんだ・・。俺・・何もしてやれなかったのに・・。怜には・・届いてたけど・・怜は気付かないフリしてたんだ・・。それがあいつなりの優しさなのかな・・」
そう言って兄ちゃんは手を合わせた。
あたしもバイクヵら降りて手を合わせた。
怜さん・・兄ちゃんと出会ってくれてありがとう・・。
玲奈さん・・今はこんなことになったけど慎耶と出会ってありがとう・・。
どうか・・兄ちゃんと慎耶を・・見守ってやってください・・。
そう心の中で呟いた。
「さてと!帰ろうか!梨李熱出ちゃうし」
そう言って結城兄ちゃんは立ち上がってあたしをバイクに乗せて走り出した。
家に帰ったのは夕方だった。
「梨李-着替えたらすぐ寝ろ-」
そう言って兄ちゃんはあえて部屋を出た。
ソファに畳まれているパジャマに腕を通す。
ずっと気になっている人。
そう、さっき入院していた人。
あの人はあたしにとってどんな存在だったのだろう。
何かが頭の中で引っ掛かる。
でもその何かが思い出せない。
きっと・・あたしにとってすっごい大切で・・。
あの人は・・あたしの何だろう・・。
太陽をバックに誰かがあたしを呼ぶ。
太陽が眩しくて顔が見えない。
だけど・・懐かしくて・・すごく愛おしい声・・。
・・誰・・・?
「梨李」
もう少しで見えそうだったのに兄ちゃんがあたしを呼んだ。
「結城兄ちゃん・・・」
「どした!汗だくぢゃねぇか!」
タオルを持って寄ってくる。
「兄ちゃん・・。あたし・・」
「ほらあ。熱出てきた。焦らなくてもお前は思い出すよ。お前の想いはんな半端な想いぢゃねえだろ?ほら、今日はもう寝れ。明日ゆっくり考えればいい」
そう兄ちゃんに言われて寝ることにした。
でも寝れるわけがない。