愛しい君へ


「何処行くの」
無言でスタスタと歩く慎耶。
いまだに腕を握られたまま。

「ここ」

急に立ち止まった。
そこは車の通行がすごく多く
交通事故も多い。
実美も言っていたけど
最近高1の女の仔が亡くなった。
信号機の下には花束がいくつも供えてあった。
「ここで最近事故があったんだ」
慎耶は遠くを見るような目で言った。
「知ってる。女子高生でしょ?同い年の」
「そう。その彼氏は同じ学校」
「ぅん。相当泣いたんだろうね」
「それヵら何にも考えれなかった」
まるでそれが自分の事のように話し始めた。
「慎耶?」

「その彼氏・・・俺なんだ」

・・・ぇ?
今何て言った?
「鈴奈ってんだけどな。すっごいいい奴だった」
花の前でしゃがむ慎耶。
「高校は違えど毎日待ち合わせして遊んでた」
あたしは黙って聞いた。
「あの日もいつもと同じように待ち合わせしてた」
慎耶は思い出すように話した。

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