愛しい君へ


『俺今日部活ないから早く帰るから』
『了解。ぢゃぁご飯作って待ってるね』

朝のやり取りを思い出した。
「やっば!もう帰る頃ぢゃん! 龍哉、ごめん!帰るね!」
「ぉ・・ぉぅ・・。気を付けてな」
「実美!帰るよ!」
自分の鞄と実美の鞄を持つ。
「ま・・待ってよ! 石橋君、またね!」
「事故んぢゃねぇよ-!」
勢いよく病室を飛び出て、病院を後にした。

「実美、ごめんね!またメールするね!」
「ぃぃって。落ち着いたらメールしてね。またね!」
あたしと実美の家は案外近いけど、途中からわかれる。
十字路を右に行けば実美の家で、左はあたしの家だ。
あたしはダッシュで家に向かった。

ガチャッ
ドアが開いた。
あれ・・。もう唯兄帰ったのかな・・・?
そっと家の中に入る。
リビングの電気が点いていた。
やっべ・・。もう居る・・・。
あたしはリビングのドアを開ける。
「ぇ・・・?」
「ぁ、梨李か?」
目の前のソファに座ってたのは唯兄ぢゃなかった。
見覚えのない男の人だった。
「あの・・・」
「何年振りかぁ?少なくとも5年は経ってるかな」

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