愛しい君へ


「兄ちゃん!」
「何ビビってんの」
くすくす笑ってまたキッチンへ戻る。
「友達だよッ!」
「知ってるよ。実美ちゃんだろ?」
「よく覚えてるね!」
忘れてるヵと思ってた。
「なんとなく。どうせ今日も実美ちゃんと遊んでたんだろ?」
「ぅぅん。お見舞いだよ」
「誰か入院してんのか?」
「友達だよ」
「そうかぁ。彼氏かぁ」
「はぃ!?」
「顔。鏡で見てみ?」
鏡を指差す。
鏡にうつった自分の顔は真っ赤だった。
「クスクス。 ほんとお前って変わってねぇな。嘘が下手過ぎだ」
昔も結城兄ちゃんに言われたっけ。


ミーンミンミン・・・。
あれは暑い真夏の真昼間。
「梨李-! ぉぃ! 梨李!」
「うるせ-な・・・。今度は何した?」
「俺のアイス食ったんだよ! 梨李は何処行った!」
「何?」
あたしは扇風機に当たっていた。
「ぉぃ! 俺のアイス食ったろ!」
「ほぇ?あたしぢゃないよ」
「嘘つけ!」
あたしのほっぺをつねる。
「うひょひゃにゃひ!(嘘ぢゃない!)」
「お前は嘘が下手なんだよ!」
「ひゃふみょん!(違うもん!)」
「今なら許してやるぞ-?」
「結城!やめろって!」
結城兄ちゃんのつねる指に力がこもる。
「・・・ひゅみみゃひぇん・・・(すみません)」
「やっぱお前かぁ!!」

その後散々怒られ、結局は買いに行かされた。

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