愛しい君へ


「だ-れが野球バカだと?」
後ろで唯兄の声がした。
「ゆ・・・唯兄!?帰ったの!?」
「あ、唯お帰り。水飲む?」
「飲む。 おいこら、梨李、誰が野球バカだって?」
「ぅ・・・」
「あ?誰がバカだと?」
唯兄が迫る。
「ほい、唯。水」
「サンキュ。  ぅ!しょっぱ!何コレ!」
「何って水」
結城兄ちゃんは口元を緩めて言った。
「絶対なんか入れただろッ!」
「何って・・・塩」
予想外の発言だった。
「塩!? 水に塩混ぜてど-すんだよ!」
「昔はよく飲んでただろ」
「バカか!昔は昔!あん頃は小さかったろ!」
「今も十分ちっけぇよ」
「もう高3なんやぞ!」
久々に聞く言い合い。

「だからって梨李1人で残してくか?普通よ-」
結城兄ちゃんはちらとあたしを見る。
「あ、あたしは平気だけど。もう高2だよ?子供ぢゃあるまいし」
「いっつも泣いてたんだろ。昔は」
「ぇッ・・・」
見透かされてる・・・。
「そ・・・そうなのか・・・?」
唯兄が不安そうに見る。
「そ・・そんなことないよッ!」
「だよなぁ。 ほれ見ろ、結城!違うぢゃねぇか!」
「そこがお前の悪いとこだよ、ばーか」
結城兄ちゃんは唯兄にデコピンをした。

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