恋色サイダー【完】
すると…いやでも目に入る、さっきの広告。
「もー、なんなのよ!!買えっていうの!?」
ぶつぶつと独り言をいいまくりながら、“失恋サイダー”を見た。
このサイダー、(意外にも)人気らしく、残りは一つだった。残りの一つを手に取ろうとした時…――
『「あ。」』
隣で飲み物を選んでいた人と、手が重なった。
目が腫れまくってるのも忘れて、手を離したと同時に相手の顔を見た。
『「げっ…」』
…どういう運命なのか、手に取ったのは今朝別れたばかりの彼、龍野櫂士(たつのかいじ)。
今この瞬間ほど、神様を恨んだことはないだろう。
「……」
『………』
どちらともなく沈黙が続く。
(…どうしたらいい?)
『…あのさ』
そんな中、沈黙を破ったのは櫂士だった。