バニラ
彼のことは聞かなかった。
言わないから、聞かない。
ただ、雨音より7つ年上なんだということは
初めて会った日に話してくれていた。
俺より10も上だ。
どういう仕事をしていて、
どんな付き合いをしているのか知らないけど、
雨音はひどく寂しそうだった。
それでも彼を待ってしまうのだと
自嘲気味に笑う雨音に
腹が立った。
雨音にではなく、そいつに。
雨音にこんな顔をさせている男が
許せなかった。