バニラ

距離

外は雨。






甘く穏やかな沈黙を破ったのは

寝てしまったかと思っていた雨音のほうだった。



『ねぇ祐、三月生まれだっけ。


何日なの?』







俺達はお互いを知らない。


知りすぎないことで


期待しない、

期待されない

その距離感が心地よいのだと
いつか雨音が言っていた。



『あ、覚えてたの。



誕生日はね、一昨日。』








何気なく答えた俺の腕の中で

なんで言わなかったの、と暴れる彼女の怒った表情が

愛しくてたまらなかった。


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