バニラ
『ー…


ありがとうございましたー』





疎らな拍手も鳴り止まないうちに
ステージの照明が落ちて、

むせ返る程の湿度と熱気を孕んだ暗闇に包まれる。


俺は例によって脳天真っ白、マイクスタンドにもたれて
余韻に浸るように放心していた。





ギターを抱え、建物を出ると
冷たく澄んだ空気を肺に送り込む。



23時55分…

今日は随分盛り上がったな。




今年の冬は特別寒い。





去年の冬なんか覚えてやしないが。

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