先生にキス〈5〉
「柊平!」
私は、自然に柊平の名前を呼んでいた。
雨の音に負けないように、大きな声で、何回も。
柊平に気付いてもらえるように。
「…幸歩?」
私の声が届いたのか、柊平の声はだんだんと、こちらに近付いてくる。
そして私の視界に、走ってくる柊平の姿が映るようになり、あっという間に大きくなった。
「幸歩…」
気付けば、柊平は傘をさして…、荒い呼吸を繰り返しながら橋のたもとまで来ていた。