先生にキス〈5〉

「幸歩…?」


柊平の心配そうな声に、私の視界が少し歪む。


「しゅ……柊平が周りを囲んでた女の人たちと、どこかに行っちゃったのかな…とか、怒って先に車に帰っちゃったのかな…って思って、胸がザワザワし始めたの…。それで慌てて探してた……。」


震える声で話す私を柊平は、強く抱きしめる。


「…そんなこと、するわけねぇだろ?大事な奥さんだっていうのに、他の女とどこかに行ったり、まして幸歩を置いて先に帰るわけねぇじゃん…。」


優しい声が耳元で聞こえる。


「でも、ごめん…。もともと幸歩とはぐれる原因を作ったのは俺だもんな。やっと女性たちがら解放されたと思ったら、売場のどこにも幸歩がいなくて、焦ったんだ…。まさか変な男とかに誘拐でもされたんじゃないかって…。」


「ゆ……誘拐!?」


それは考え過ぎな気がするけど……。



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