先生にキス〈5〉

「そっか…。」


柊平は悲しそうな顔をしながら、私の髪に指を通す。

「幸歩…本当にごめん…。握ってた手紙見たんだ…。俺のせいで、お前を泣かせた上に、風邪…もっと重くさせた…。」


「柊平は何も悪くないよ…。だから“俺のせい”だなんて言わないで?私の方こそ、柊平への手紙…勝手に見ちゃって、ごめんなさい…。」


柊平は首を横に振った。


「幸歩、なんでそんなに優しいんだよ…。それに、お前が謝る必要は何もないだろ…?」


私の手をギュッと強く握りながら見つめる柊平の瞳は、部屋の中を淡く照らすオレンジ色のスタンドライトで少し潤んでいるように見えた。



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