先生にキス〈5〉

「知らない女の人が紙袋を持って来た日以来…、お父さんもお母さんも会話が減ったの…。私の前では笑顔を見せてたけど、無理やり作ってるの分かってたんだ…。でも、私はいつもみたいに笑顔を返してたよ…。私が明るく振る舞ってたら、何か変わるかもしれない…って、どこかで願ってたから…。」



願う…っていうよりも、そう信じていたかった。


また何気ない話題で盛り上がったり、お腹抱えるくらい笑ったり…


そんな…
ささやかな幸せを感じられる日々に戻ってきて欲しかった。



「でも……ダメだった。日に日に家の中の空気は息苦しくなっていって……、笑顔でいることも辛くなってきた頃…、3人で幸せに暮らしていくはずだった生活が終わったんだ…。」


涙をすすりながら何度も拭ってた私を、柊平は抱きしめた。



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