きいろいアヒル
「あれ? 聞いてない? 数学補習のハナシ。“鬼”からの」



「補習?」



昨日返してもらったテストの点数は、私、悪くなかったはず……。



それなのに、私、“鬼”の補習受けなきゃならないの?



「私が、補習?」
 


私はもう一度沢原くんに聞き返した。



多分、私は不可解な表情をしていたのだと思う。



彼はそれに気づき、



「あっ、補習、受ける方じゃなくて、教える方ね」
 


と言った。



私の頭の中には、まだクエスチョンマークが浮かんでいた。



「は?」



「香田さんは、今日から一週間、俺の先生だって」



「えーっ? 何で!?」
 


あまりにも突拍子もない話で、驚かずにはいられなかった。



「香田さん、テストの点数、クラスで一番良かったんだろ。だから一週間後の再テストまで香田さんが俺の先生だって」



「ちょ……ちょっと、誰がそんなこと……」



「“鬼”」



そう言うと、沢原くんは黒板の上に掛けてある時計に目を遣り、「やべ、時間ねぇ」とお弁当のそぼろご飯をかき込んだ。
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