きいろいアヒル
そんなの、無理だよ。



私、ひとにものを教えたことないし。



沢原くんと、そんなに仲いいわけじゃないし。っていうか、今日さっき初めて言葉を交わしたわけだし。



数学教えるなんて、そんな、同級生相手にエラそうなこと、できないよーっ!



なんでそんなこと、“鬼”は私にさせるのだろう。



こんなのって、ただの職務怠慢じゃないか!



というわけで、私は1限目の古文の授業が終わると、職員室の田中先生――“鬼”のところへ抗議しに行ったのだけれども。



「同じクラスの連帯責任だ」
 


と、私の言葉を一蹴されてしまった。



しかも、(いつものことだけれど)なんだか“鬼”は機嫌が悪そうで、こめかみあたりの血管がヒクヒクいっていた。



1限目の授業でまた何か気に食わないことがあったのだろう。



これ以上抵抗すると、“鬼”の机の横に掛けてある必殺凶器の黒板用三角定規で、攻撃されそうな勢いだったので、すごすごと私は職員室を後にした……。
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