きいろいアヒル
5.Ryo
昼間は、席が隣同士だからといって、特に会話を交わすことなく。



今までのワタシタチだった。



沢原くんは沢原くんで、色んなひとに取り囲まれていたし。



私は私で、そっと教室の隅にたたずんでいたし。



それでも、放課後のふたりきりはやってきた。



帰りのショートホームルームが終わって。



沢原くんは、他の部活に出るでもなく、頬杖をつきながら自分の席に座っていた。



私も私で、本を読みながら自分の席に座っていて。



とにかく、クラスの皆がいなくなるのを、待っていたんだ。



周り、うるさそうだし。



……なんとなく。平静を装っていた。



そして、最後に日直の子が、戸締りを確認し、私に、「帰る時は、電気消してって」と言い残し、教室を出て行った。



沢原くんは、黙ってまた机をくっつけてきた。
 


「今日もよろしく」と言いながら。そして言葉を続けた。



「さて。今日はここから教えて」
 


沢原くんは、パラパラと教科書をめくって、開いて見せた。
< 26 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop