きいろいアヒル
「へぇ、そうなんだ。意外だな」



「香田さんに彼氏かぁ」



皆、言いたいことズバズバ言ってくる。……そこに悪気はないということは、解っていた。



けれど。



「遠距離なんだって。愛は距離をも越えるのよ、ねぇ」
 


そう言った女の子……境さんは、去年同じクラスだった子だ。



そういや、私とリョウのこと、知っているひともいるんだ。



今更ながら思った。



だけれど、別れたということは、まだ誰にも言っていなかった。



口に出してしまうと、現実として認めざるを得ないから。



信じたくなかったんだ。



私、心のどこかでは、まだ……。



だけど、今は皆を目の前にして何も言えなかった。



花村さんが、“へぇ”といった表情で、私に何か問いたがっている様子だった。だけど、私は視線をそらした。



悪意もなく騒ぎ立てる皆にも、ただただ黙ってひきつった笑顔を見せることしかできなかった。
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