きいろいアヒル
白地のワイシャツの制服のポッケに、黄色いアヒルちゃん。



目がくりくりしていて、口唇もたぷんとしていて、あどけない、おどけたキャラクター。



私は、それが可愛らしくて、つい、声をたてて笑った。



「……あ。これって、シャープペンないから、勉強放棄ってこと?」
 


私は冗談半分で沢原くんをニラむ。



「違うよ。心外だなぁ」



と言うと、黒い布地の筆入れから、黒くて細いシンプルなシャープペンを取り出して見せた。



私は、黙って、うなずいた。



彼は、歯を見せて、笑った。



そして沢原くんは、さっきから手をつけている問題を解き始めた。



そして、静かに、つぶやいた。



「そのアヒルちゃんが、嫌なこと全部、湖に沈めてくれるよ」
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