きいろいアヒル
言葉を交わしたことはなかったけれど。



いつも皆の中心にいて、笑顔を振りまいている、破天荒で型破りで自由な、そんな沢原くんにどこか惹かれていた。



いつも、私は彼を遠巻きに見ていた。



話すきっかけを、つかもうと思っていても、逆に意識しすぎちゃっていて、変に縮こまっていたのも、あったんだ。



……数学の補習だって、相手がきっと沢原くんじゃなかったら、引き受けなかった。



“鬼”になんて言われようと、きっとボイコット貫いてた。



さっさと帰ってしまえば、それまでだもの。



だけど、おとなしく教室で彼のことを待っていたの。


ふたりきりが嬉しかったの。




きっと、そうだったんだ、私。



……リョウのこと、引きずっていた部分もあるけれど。



それは単なる私の確執に過ぎなかったのかもしれない。



あの日、大声で泣いたのも。



沢原くんに、甘えたかっただけなのかもしれない。
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