きいろいアヒル
「0点とる奴もいるし……沢原っ! 沢原陵!」



「ふぁい」



気の抜けた返事をする沢原くん。……おいおい。



っていうか、それよりも、何も沢原くんが0点だって皆の前で言うことじゃないじゃない。



「お前は後で職員室に来い! いいな!」



沢原くんは、目をつぶりながら、ゆっくりと首を縦に振った。



まるでこたえてないような感じだ。



「……ったく。ちなみに、このクラスの最高点は98点だ。見習えよ。やればちゃんとこうできる奴もいるんだからな! 以上!」



……できる“奴”。ほんとに教師なのか、この人は……。



お前ら、とか、奴、とか。生徒をナメてるとしか思えない。
 


鬼はそう言い放つと、号令をかけさせることなく、頬をブルドックのようにブルブルと震わせて教室を後にした。



私は、“98”と赤字で書かれた答案用紙を、ひっそりと机の中へと隠した……。



そして、隣で大きなアクビをしている沢原くんを見た。



強いなぁ、沢原くんは……。



人生捨ててるというか、肝が座っているというか。



そういうところ、ほんと尊敬する。
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