きいろいアヒル
だけど、止めようとすればするほど、涙の雫は大量生産されていった。



私は、涙でぼやけている視界から、黒板の上に掲げられている時計を見た。



朝のホームルームまで、あと10分ある……。



それを確認すると、私はクラスの皆に見られないように、片手で目を覆い、俯きながら教室を後にした。
 


駆け込んでトイレに入ると、私は洗面台の前でハンカチを目に当て、心を落ち着かせようとした。



すると、誰かが私の肩を叩いた。



「どうしたの? 香田さん」



「……花村さん」



様子のおかしい私を追って彼女は来てくれたらしい。


綺麗に整った眉根にシワを寄せて、心配してくれている表情。



「あはは。ごめんね、なんでもないの……」
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