きいろいアヒル
「実は……沢原くんに、好きだって、言われたの」



「陵が? へぇ〜」



花村さんの表情には、悔しいとか淋しいだとかそういうものは見られなかった。


ただただ、にこにこしていた。



「……ごめんね」



「なんで謝るの?」



「だって、元カレにしたって、その人に新しく好きな人ができるって、嫌なもんじゃない?」



「あー。なるほど」



「嫌じゃないの?」



「むしろ、嬉しいわよ」



「嬉しい?」



「うん。陵には前を向いて歩いてほしいから」



その言葉に嘘はないようだった。
 


「私が陵と別れたのはね、お互い恋愛感情を持ってないって解ったから」



そう言って、彼女はごくんとひとくち、お茶を飲んだ。



「去年、同じクラスだったじゃない? 私たち、ほんと仲がよくて、気も合って、それでなんとなく一緒になる時間が増えて、じゃ、つきあっちゃおうか、みたいな」



「好きじゃ、なかったの?」



私は小首を傾げながらも、じっとセピア色の花村さんの瞳を見つめていた。
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