みつめていた。




あたしのお腹に1つの命が宿ったのは9ヶ月前だった。




吐き気と生理が遅れていることに気づき、医者にいくと、あたしの体はあたしだけの体じゃなくなっていた。



その日の夜に信に打ち明けると、信は泣いて喜んでくれた。




そして、「ありがとう」と言ってくれた。



それから9ヶ月間。


信はすごい心配性で、お腹の子の為に、あたしにはたくさんのことが禁止令を出された。



高い所には行くな、上がるな。


重い物は持つな。


無理をするな。


3食ちゃんと食べる。


階段は気をつける。



なにもかもお腹の子にとって大切なこと。




信がポストに紙を入れるようになったのは、妊娠したことが分かった1週間後。


まだ9ヶ月前は秋で夜と朝が寒くなってきた季節だった。



その寒さを心配して、信は毎日『来るな』と書かれていた紙をポストの中に入れていた。



あたしが新聞を取りに行くことをやめないからだ。




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