くつしたに穴
「えっ、いや、何で」
しどろもどろしていると、
「いやー面白かった…って言っちゃ駄目だな、あのさ、サイフ取ってって実は、遊び心で言ってみた」
ははっ、って王子様みたいな笑顔で言った彼の言葉。
…これには開いた口がふさがらない。
「し、知ってたんなら言ってくれれば…こんなに必死に隠さなかったのに…」
「ごめんごめん。でも可愛かったよ?」
「そそそういう問題じゃないよ…」
「可愛い」攻撃にあたしは面とくらってしまった。
もうクタクタ。
そして恥ずかしいったらありゃしない。
「別に靴下に穴開いてるからって引いたりしないのに」
「でも、恥ずかしいもん」
「オレだって開いてるときは開いてるってー(笑)」
…彼はこのことを楽しんでいるようにしか聞こえません。
―でも、
そう彼は言うとあたしに向かって言った。
「今度は手料理作ってね?」
……ハイ。
そう言って、あたしたちは夜でも明るい繁華街を去って行った。
二人、彼のコートの中で手を繋いで。
END☆