甘い恋の誘惑
Γでも本当、時の流れって凄いよね…」
莉子はそう言って軽く息を吐き、カップに手を伸ばし口に含んだ。一口飲むと莉子は薄ら笑みを漏らし口を開く。
Γここ数年の間にアンちゃんだって変わってるし、アユだって」
Γあ、たし?」
少しの沈黙の後、莉子を見てポツンと小さく呟いたあたしの声に莉子は笑みを漏らしながら頷いた。
Γアユ…よく笑うようになった」
そう言われた事が自分でもよく分からなかった。あたし…そんなに笑ってんのかな?自分じゃ分かんないけど他から見ると、そうなのかも知れない。
Γ…そうかな?」
首を傾げながら呟くあたしに、
Γそうだよ!」
と言って莉子は声を上げた。
Γでも…」
続けながら言った莉子の声は一気に暗くなり、寂しそうな顔をして、そのまま口を開いた。
Γ変わってないのは大和の気持ちだけだと思うの。大和…まだアユを想ってんだよ?もう5年も経つんだよ?もしかするともっと先からかも知んない」
Γ……」
Γ普通ありえないでしょ。何年も想い続けるって。アユはよく言ってたよね…どうせあたしから離れて行くんだって…」
Γ……」
Γアユ…もっと素直になんなよ!自分の気持ちに気付きなよ!!大和は…大和はそんな男じゃないよ」
莉子の張り上げた強めの声が、だんだんと小さくなって呟くくらいの声になった。 そんな莉子に何をどう返したらいいのかも分からなくなってた。