甘い恋の誘惑

Γ何ですか、これ?」


差し出された紙を受け取り、あたしはそれに目を通した。


Γお誘い」


雄二さんは口角を上げ微笑んだ。その長方形のチケット。それは紛れもなく高級クルーザーで有名なお食事券だった。


Γえ、あの…」

Γまた今度、誘うって言っただろ?その誘い。アユちゃんの気持ちとか聞きたいし」

Γき、…もち?」

Γまぁまぁ、それは置いといて金曜の夜あけといて」


雄二さんはそう言って、席を立ちそそくさと姿を消した。

取り残されたあたしは、ただ手に持っているチケットを眺めてるだけで、はっきし言って何でこんな高級な所に誘うのか分かんなかった。


あたしの気持ちって何?あたしが思う雄二さんへの気持ち?…な訳ないか。



Γやっだぁー。ちよ、先輩!!これって超高級で有名なクルーザーじゃないですかぁ!?」


暫くして突然、背後から聞こえてきた声に肩がビックっと上がった。その弾けた声に反応して振り返ると、後ろから覗き込む様にユリちゃんの顔があった。


Γな、何?」


慌てて声を返すとユリちゃんは菓子パンを持って、前の席に座る。


Γ何って、あたし今から休憩なんですぅー」


そう言って、紙パックのカフェオレにストローを挿し菓子パンの袋を開けた。


Γあ、そっか…」

Γところで誰からのデートのお誘いですか?」


またキラキラと輝かせる目にあたしは思わずため息を吐き出した。


< 106 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop