甘い恋の誘惑
Γ何ですか、これ?」
差し出された紙を受け取り、あたしはそれに目を通した。
Γお誘い」
雄二さんは口角を上げ微笑んだ。その長方形のチケット。それは紛れもなく高級クルーザーで有名なお食事券だった。
Γえ、あの…」
Γまた今度、誘うって言っただろ?その誘い。アユちゃんの気持ちとか聞きたいし」
Γき、…もち?」
Γまぁまぁ、それは置いといて金曜の夜あけといて」
雄二さんはそう言って、席を立ちそそくさと姿を消した。
取り残されたあたしは、ただ手に持っているチケットを眺めてるだけで、はっきし言って何でこんな高級な所に誘うのか分かんなかった。
あたしの気持ちって何?あたしが思う雄二さんへの気持ち?…な訳ないか。
Γやっだぁー。ちよ、先輩!!これって超高級で有名なクルーザーじゃないですかぁ!?」
暫くして突然、背後から聞こえてきた声に肩がビックっと上がった。その弾けた声に反応して振り返ると、後ろから覗き込む様にユリちゃんの顔があった。
Γな、何?」
慌てて声を返すとユリちゃんは菓子パンを持って、前の席に座る。
Γ何って、あたし今から休憩なんですぅー」
そう言って、紙パックのカフェオレにストローを挿し菓子パンの袋を開けた。
Γあ、そっか…」
Γところで誰からのデートのお誘いですか?」
またキラキラと輝かせる目にあたしは思わずため息を吐き出した。