甘い恋の誘惑
紙切れを見つめていると、ふ…と頭の中を何かが過った。
“アユにその気がないなら、その人と付き合う――…”
“もう、大和、待たせるの止めなよ――…”
莉子の声が頭を過る。
“俺、やっぱアユじゃなきゃダメだわ――…”
“アユが好きだから――…”
大和の声が駆け巡る。
“時間が経つほど風化しちゃいますよ――…”
“風化…崩れるんですよ――…”
ミキちゃんの声が頭に響く。
“アユちゃんの気持ち聞きたいし――…”
“終わったら通用口で待ってる――…”
雄二さんの声が重くのしかかる。
“先輩、鈍いですねぇ――…”
“プロポーズですよ――…”
ユリちゃんの声が痛々しく感じた。
もう時間がない。タイムリミットは、もう…すぐそこまで来てる――…
Γ…大和…」
紙切れを見てポツンと呟いた大和の名前。分かんないけど急に大和に会いたくなってきた。
あの頃のあたしはいつも莉子と居て、大和も居た。気軽に話してくれる大和。一緒に居て会話がなくても、その落ち着いた雰囲気があたしには心地よかった。
大和はあたしを突き放そうとはしなかった。どんなに大和に怒りをぶつけても、言い合っても、面倒くさそうに大和はするけど、それでもあたしを一人ぼっちにはさせなかった。
そんな…
大和に会いたくなった――…