甘い恋の誘惑
Γま、待って下さい!」
やっと出たあたしの声は雄二さんとの距離が少し空いたくらい。
数メートル離れている距離をあたしは駆け足で行った。
そんな雄二さんの腕をあたしは掴み、
Γ待って下さい」
もう一度、声を吐き出した。
雄二さんは進めていた足を止め、あたしの掴んでいる腕を一度みてから視線を上げる。
Γどした?アユちゃん…」
Γあの、あたし…やっぱり…。すみません」
雄二さんの腕をそっと離しあたしは深々と頭を下げた。
Γ何が?」
そう言った雄二さんの声が少し強張って聞こえたのは気の所為なんだろうか。
Γごめんなさい。あたし、やっぱし行けません」
そう頭を下げたまま言ったあたしに、雄二さんからの言葉はすぐには帰って来なかった。
時間にすると本当に何秒間。だけどその何秒間がとてつもなく長く感じて、その数秒間の間に待つ雄二さんの言葉が自棄に怖く感じた。
若々しかったあの頃は平気で色んな事に無視できた。愛想が悪ければ態度だって悪い。
子供じゃなければ、まだ決して大人になりきっていないけれど、やっぱりちゃんとこう言う事は大人になるにつれてちゃんとしときたい。
って思うあたしなりの考えだ。