甘い恋の誘惑

雄二さんが姿を消した後、あたしはトボトボと家に帰った。


結局はその夜、眠りにつく事なんて出来なくて、気付けば朝を向かえてた。


遅番であるあたしは、その仕事の前に行きたい所がある。行って、伝えたい事がある。

突然、奥底からドバっと何かが溢れ出したように今まで気付かなかった気持ちが押さえきれずにいた。




――…大和に逢いたい――…



朝7時。一枚の莉子から貰った紙切れを頼りにして着いた場所は大和のマンション。


こんな早い時間に来た理由はただ一つ。夜の仕事を終えて帰ってきた大和ならまだ起きてると思ったから。1日でも1分でも1秒でも大和に早く会いたかった。


見上げる先には、ごく普通の7階建てのマンション。躊躇う事なく足を進め、あたしは大和の部屋がある5階へと向かった。

エレベーターを降り角を曲がったその瞬間――…



何だか見てはいけないような物を見てしまった。なのに、あたしの足は引き戻す事なくその場で佇(たたず)む。

足を引く事もその先にある何かから目を遠ざける事なく、ただただ目の前に起こっている光景をずっと見てた。





――…大和と…女の人が居た――…



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