甘い恋の誘惑
┣忍苦
―――…
遠くに意識がぶっ飛んでいる感覚から、薄らと目を開けた。
徐々に見えてくる視界にあたしは一瞬、戸惑った。
静まり返った小さな部屋に薄暗い灯り――…密かに聞こえてくる曲が耳元でなり続けていた。
それが何なのか分かるのに、そんなに時間は掛からなかった。耳元にあるのは耳に押し込んでいたイヤホン。
そこから流れてくる曲が遠くの方で掛かっているかのように密かに聞こえてくる。
まだ意識がはっきりしないまま横たわっていた身体を起こした時――…
Γ…えっ…」
腕が何かに当たったと同時にそこに視線を落とすと、一瞬の出来事の様に意識が蘇った。
腕に当たったのは隣にいる大和の頭。未だに大和はスヤスヤ寝てて、それで漸く今いるこの場所が理解できた。
莉子に連れられて来たカラオケで、どうやらあたしは眠ってたらしい。…と言うか肝心な莉子が居ない。一緒に来た俊さえも居ない。
Γ…ありえない」
思わず漏れたため息と、どうしようもない感情。たまーに、たまーにだけど何回かあるこの光景。
また…やってしまった。