甘い恋の誘惑
Γおい、待てよアユ!!」
Γ……」
走り切った所為で荒れた呼吸と苛立ちが込み上げる中、不意に聞こえたのは大和の焦った声だった。
走るスピードを落とし、ゆっくりと歩いて行くあたしの腕を大和は掴む。
Γなぁ、アユ。どうしたんだよ?」
あたしが突然走りだした事に何が何だか分からない大和はあたしと同じく息を切らせながら問い掛ける。
大和に腕を捕まれたままあたしはさっきよりも歩くスピードを少し上げ、大和に何も応える事もなく歩いた。
Γなぁ、アユ待てよ」
何も言わないあたしに大和は納得がいかないのか、あたしの腕を強く引きあたしの足を止める。
必然的に止まったその足元から視線を徐々に大和に向け――…
何も悪気のない大和をあたしは睨み付けた。
Γ何、怒ってんだよ」
Γ……」
睨み付けるあたしに大和は面倒くさそうに呟く。
Γ俺が寝てたからか?」
Γ違う。あたしも寝てた!!」
とりあえずそれだけは否定したかったからあたしはすぐに声を出した。
だけどその声は自分にでも分かるくらい苛立っている声で…
Γじゃあ、何怒ってんだよ…」
案の定、あたしが思っていた通りの言葉を大和は吐き出した。