甘い恋の誘惑
大和はほんっとに面倒くさそうにため息を吐き捨て、頭をクシャッと掻く。
目の前の大和が困った様に顔を崩してるのも、あたしの所為だって分かってる。
別に大和が悪い訳じゃないのに、大和を困らせる様な怒らせる様な態度をとらせているあたしが悪いんだって分かってる。
だけどやっぱり可愛く言えない。
もっと…もっと普通に優しく言えたなら、今、目の前にいる大和だって困った顔なんてしないのに。
Γなぁ…アユ?」
心配そうにあたしの顔を覗き込む大和にあたしはゆっくり首を振った。
Γいい。何でもない」
そう言って足を進ませるあたしに、
Γは?いいって何がだ?何でもないって何が何でもねぇんだよ!!」
そう言って大和はあたしを追い掛ける。
Γだから何でもないって」
Γじゃあ怒る必要がねぇだろよ」
Γ別に怒ってないし」
Γ怒ってんだろ?アユ見てっと…アユ見てっと分かんだよ。いつものアユじゃねぇって事くらい…」
そう言った大和は足を進めて行くあたしの前で止まり、その所為で前に進めなくなったあたしは必然的に足を止めた。
見上げる大和はさっきとは打って変わって眉間にシワを寄せたままあたしを見つめてる。
“いつものアユじゃねぇって事くらい――…”
それを聞いた途端、あたしの胸がなんだかギュッとした。