甘い恋の誘惑

Γ機嫌悪くないから…」


そう小さくあたしは呟き、クルッと後ろに振り返りあたしは後ろに指差し言葉を続けた。


Γもう…家だから。…ありが――…」


Γあっ、ラッキー!!アユの部屋電気点いてないって事はまだ帰ってない」


大和に“ありがとう”って言おうと思ったのに、そのあたしの声は暗闇の中を弾けるくらいの明るい声で途切れた。

その明るい弾けた声が誰の声かなんて見なくても分かる。


あたしの嫌いなアンだ――…


思わずまたあたしの顔が曇る。家に指差していた手がだんだん下に落ちていくのが分かる。

目の前に居る大和はあたしを通り越して、あたしの家の方を見つめている。


Γそれにしてもアユちゃんって冷たいよな。俺、今日挨拶したのに無視だしよ」

Γアユはあれが普通だから」


あたしが居るのに。あたしが居るのにも気付いてない二人はまたあたしの話題を口にする。

あたしが居たら悪いのかよ…あたしが冷たかったら悪いのかよ。


あたしが居なかったら何がラッキーなんだよ…。



ほんっと苛立つ!!今日は最悪最低な日――…


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