甘い恋の誘惑
Γお前、ここでどうすんだよ」
深く息を吐き捨てた大和はそうあたしに問いかけ、あたしの隣に腰を下ろす。
ベンチの上に両足を上げあたしは膝を抱えて、その中に顔を埋めた。
Γなぁ、聞いてんのか…アユ?ここでどーすんの?」
Γ……」
Γまさかお前、ここで寝るんじゃねぇだろうな」
Γ……」
隣に居る大和の声がため息混じりで――…
Γその、まさかか…」
大和はズバリとあたしのしようとしていた事を見事に突き破った。
Γ風邪ひくぞ」
Γ……」
Γ帰んねぇの?」
Γ……」
Γなぁ…アユ?」
Γ…――いで」
Γん、何だって?」
Γだから、あたしに構わないでよ!!大和は帰っていいよ」
あたしは両膝の真ん中に顔を埋めたまま少し苛立った声を出す。
Γ帰れって言われて帰れっかよ!!…――アユが居るなら俺もここに泊まる」
Γはぁ!?」
思わず大和の言葉にあたしは思った以上にデカイ声を上げ、それと同時に伏せていた顔を上げた。
Γアユ一人にさせたら何すっか分かんねぇし」
Γ何もしないから帰って!!」
Γ無理」
Γだから何で大和はあたしに構う――」
またあたしの言葉を遮ったのは携帯のメロディーだった。勿論あたしじゃなくて大和の携帯。
視線を大和に向けると、大和はため息を吐き捨て舌打ちをする。
そんな大和に、
Γほら、出なよ。女からの電話」
嫌味ったらしくあたしは吐き捨てた。