甘い恋の誘惑
大和と付き合える確率が少しでもあった。大和は優しいし女からも人気が高くて皆からも好かれてる。
だからあたしも大和に好意をもったんだ。
でも、あたしは結局見捨てられる側。そんなのもいい加減うんざりする。
あたしはアユであってアンじゃない。
それからの大和との会話なんて全くなかった。時たま不意に落ちてくる涙の訳は自分にだって分かんなかった。
悔しいからなのか自分自身になのかもさっぱり分からなかったけど泣いてる所を大和には知られないように涙を拭ってた。
男の前で涙を見せたのは今まで1度もない。だって馬鹿みたいじゃん。
泣いたからって何になんの?泣いたら自分に得る物があんの?涙なんて所詮、あたしと同様飾り者。
ちっぽけなあたしのプライドなのかも知れない。泣いて“泣くなよ”とか“何で泣いてんの?”なんて言葉はあたしは求めてない。
そう言われたからってあたしから返す言葉なんて何もないし、男からすると泣かれるだけ面倒くさいじゃん。
だからそれも違うんだ。あたしとアンの持つ素質が…アンならきっと男にすがり付いちゃうんだろうな。
ほんと、あたしって損な女。ほんと、あたしって周りにいる人達の飾り者。
涙を完全に拭った後、あたしは背後から聞こえてくる大和の寝息を耳にしながらそっと目を閉じた。